少し、立ち止まる時間があるから前に進める。
あなたの胸の小函には
大切な思い出が詰まっているから、きっと大丈夫。

涙をためてあなたを想う
LYRIC VIDEO

この歌は、東日本大震災が起きた2011年、冬に作られました。
震災によって子供を失ったお母さんの気持ちに、寄り添える歌が作りたい、と言う強い願いから生まれた歌です。

その当時、私がマネージャーをしていた作詞家、康珍化(かん ちんふぁ)が歌詞を書き、CHILDHOOD(チャイルドフッド、ハンドフルート森光弘とピアノ臼田圭介のデュオ)の二人が曲を書きました。翌年2012年に発売されたCHILDHOODのアルバムに収録されましたが、そこに歌はなく、ハンドフルートが奏でるメロディーに歌詞を載せて聴く形となりました。

2019年の暮れ、「涙をためてあなたを想う」を歌にして、2021年被災地に届けたいと考えました。
復興復興と叫ばれ、前だけを見つめ毎日を必死に過ごして来た方々に、10年と言うひとつの節目が訪れるのであれば、その時にこの歌を聴いてもらえないだろうかと思ったのです。

この歌に康が込めた想いは、子供を失くしたお母さんの心に寄り添うことでしたが、10年と言う月日が流れる今、幼かった子供たちも成長し、様々な感情が芽生えて来る頃だと思います。現実と向き合わなければならない時が来た時に、もし気持ちのやり場に困ってしまうことがあれば、心の拠り所になってくれるような、そんな歌にもしたいと思いました。
震災から間もない頃新聞で見た、両親と妹を失った5歳の女の子の、無邪気で優しい笑顔がずっと忘れられずにいました。数年後たまたま、元気に成長しているその女の子の様子を知ることが出来ました。そこには、何が起きたのか少しずつ分かって来ているようだ、と言うおばあちゃんの言葉が残されていました。

歌は、全く歌唱経験のない、秋田に住む大学生、吉原夢さんに歌ってもらいました。
彼女の素朴で何色にも染まっていない歌声は、この歌詞に込められた想いを、ただひたすら真っ直ぐに表現してくれたと思います。そして彼女の歌声に合わせCHILDHOODの二人には、複雑な感情が、歌を聴き終えた時には、温かいひとつの想いに束なるような世界観を作り上げてもらいました。そうして出来たのが、この歌「涙をためてあなたを想う」です。
聴いていただけたら嬉しいです。

2021年2月1日
プロデューサー
ロータス合同会社 鈴木幸子

<作詞家 康珍化より>

東日本大震災から半年が過ぎた秋のことです。旧知の音楽プロデューサーから、チャイルドフッドというユニットの曲に詞をつけてくれないかと頼まれました。チャイルドフッドは、ハンドフルートという、てのひらにオカリナを隠したような暖かい音色を奏でるユニットです。そのやさしい音色に惹かれて、「震災のことを書きたいんだけど」と、引き受けました。

大津波が東北の海岸に爪を立てて以来、少しでも前を向こうとみんなが励ましあっている輪の中に、そっと溜息を逃がしている人たちがいることに気がつきました。言うまでもなく、沢山の人が津波に命を奪われて、残された家族や友だちの心に、ぽっかりと埋められない穴をあけて去って行ったからです。

どんな言葉をその虚ろに注げば、大切な人を失った悲しみや嘆きを和らげることができるのだろうか、悩みました。未来や希望を歌おうか、虹のような言葉のエールを架けようか。迷った末に僕は、悲しい気持をそのまま、「わたしは泣いた、泣いた、泣いた」と書きました。長く歌に接して学んだことを信じたからです。涙は心を癒して、悲しみを軽くしてくれると。

その冬、歌は完成しました。でも、誰かの唇にのぼることはありませんでした。チャイルドフッドはインストルメンタル・ユニットで、詞はブックレットのみに掲載されて、誰も歌わないという、そんな約束の歌だったからです。込めた願いは、ブックレットと共に閉じられ、被災地への色んな想いと同じように10年という月日がその上に積もりました。

ところが、誰も覚えていないはずのこの歌を、仕事仲間の鈴木幸子さんが覚えていてくれました。震災から10年の節目の年に、なんとかして被災地に届けたいと申し出てくれて、レコーディングのイニシアチブを取ってくれました。感謝の気持ちでいっぱいです。

悲しみを癒そうと綴られた歌が、時を経てみなさんの耳に届いて、そして、大切な人をいつまでも忘れないという、そんな優しい歌に変わっていてくれたらうれしいです。

康珍化

PROFILE

本名、康珍化(かん ちんふぁ)。1953年生まれ。1979年アン・ルイス「シャンプー」で作詞家デビュー。杏里「悲しみがとまらない」をはじめ、高橋真梨子「桃色吐息」、中森明菜「ミ・アモーレ」、アニメ「タッチ」、BoA「メリクリ」など、多くのヒット曲を作詞。東日本大震災の被災地に想いを寄せて、上間綾乃「ソランジュ」、中西保志「秋日傘」を発表している。

康珍化(かん ちんふぁ)PROFILE

<作曲、編曲家CHILDHOODより>

この曲は、2012年に発売されたCHILDHOODの「family」に収録されています。その時も康さんの歌詞はついていましたが、ボーカルはなく、ハンドフルートで奏でるインストゥルメンタルの楽曲として収録されました。
この曲をボーカル入りでレコーディングをするというお話を頂いた時、森光弘の母が亡くなったばかりでした。
演奏家の母だったので、音楽をすることが辛い時もありましたが、今は音楽のおかげで前を向いています。
「私は大丈夫、心配しないで」という歌詞は、心に深く響きました。
東日本大震災から10年。改めて、震災により犠牲となられた多くの方々とそのご家族にお悔やみを申し上げます。

CHILDHOOD:森光弘、臼田圭介

PROFILE

CHILDHOOD(チャイルドフッド)は東京音楽大学出身のハンドフルート(森光弘)とピアノ(臼田圭介)のデュオ。 2009年メジャーデビュー。ニューヨーク、ヒューストン、ロンドン、上海万博など、 海外コンサートを成功させる。「情報ライブ ミヤネ屋」「世界まる見え!テレビ特捜部」など、テレビに多数出演。2017年7月5日 初のフルオリジナルアルバム「grateful」発売。

森 光弘(Mitsuhiro MORI)
ハンドフルート、独自奏法創始・呼称命名 / 作曲家 / 東京音楽大学 音楽教育科卒業 奏法をハンドフルートと造語で命名。
NHK「フックブックロー」出演。
ドレミ楽譜出版 月刊ソングス 2016年10月号から連載開始。 熊本県の平成音楽大学がハンドフルート専攻を新設し、講師就任。 2017年10月28日ハンドフルートDVD付き教則本発表。
臼田 圭介(Keisuke USUDA)
ピアニスト・作曲家・編曲家・プログラミング / 東京音楽大学ピアノ演奏家コース卒 業、同大学院伴奏科修了
コンサート、CD等、CHILDHOODの楽曲の全編曲を担当。 楽曲提供例は「テレビ東京 幸せを創る手の物語」のOP、ED、CM等音楽プロデュースなど。2017年、千葉市芸術文化新人賞奨励賞を受賞。
CHILDHOOD(チャイルドフッド)PROFILE

<吉原夢さんへのインタビュー>

今回この歌を歌ってくれた秋田在住の大学生、吉原夢さんに話を伺いました。

「涙をためてあなたを想う」を歌うことなった経緯を教えて下さい。
吉原:高校最後の文化祭で中孝介さんの「花」をアカペラで歌ったのですが、その映像を誰かがSNSに上げていて、それを見つけてくださった鈴木さんに声をかけて頂き、参加させて頂けることになりました。
この依頼があった時にどう思いましたか?
吉原:突然のことで本当に驚きましたし心配もありました。
両親の影響もあり歌は好きでしたが、歌のレッスンもしたことがない上、レコーディングなんて未知のこと過ぎて想像もつきませんでした。
でも、コロナ禍で被災地に実際に会いに行ってお話することがなかなか難しい今、大好きな歌を通して出来ることがあるのならと思い受けさせて頂きました。
実際に始めてみてどうでしたか?
吉原:まず基礎をしっかり学ぶと言うことで、2020年6月から秋田のボイストレーニングスクールに通い発声などのレッスンを受けさせて頂きました。並行して近くのレンタルスタジオを借りて週に一度は東京の鈴木さん、ディレクターの成海さんとリモートで歌のレッスンを始めました。大学もコロナの影響で閉鎖されてしまったので、声を出して練習する場所がなく、不安もありましたが、たくさんの方々の支えの元、しっかりと基礎を学ぶことができ、この歌に対して真摯に向き合うことができました。
初めてのレコーディングはどうでしたか?
吉原:最初は秋にボーカルレコーディングの予定でしたが、秋〜冬にかけてコロナが酷くなる可能性があると言うことで急遽夏にスケジュールが変更となりました。
東京のスタジオで2日間ボーカルレコーディングをすることが決まっていたのですが、その頃に運悪く第二波が来てしまい、私が東京に行くのは難しい状況となりました。
2日間予定されていたボーカルレコーディングも1日だけの一発勝負となり、福島にあるスタジオのご協力を得て、徹底したコロナ対策の元、集中して短時間で歌いました。
最初は緊張のあまり足が震えて立っているのがやっとでした。
歌声もか細く震えていたと思います。しかし成海さんや鈴木さんが優しくサポートしてくださったことや、スタジオを貸してくださった安部さんの穏やかな暖かい雰囲気のお陰で、徐々にリラックスして心を込めて歌えるようになりました。
この歌を聴いてくださった方に伝えたいことはありますか。
吉原:歌を聴いてくださった方々が、前向きな気持ちになれるように、自分自身、前向きで明るい気持ちで歌いました。また、歌詞に合わせて自分の友達や家族、故郷の風景を想像して歌いました。私たちは生きている限り、未来は必ずあります。前を向いて歩む先にはきっと明るい未来が待っています。この歌を聞いて、明るい顔をした大切な人、楽しかった思い出を思い出していただけたら、嬉しいです。それらが明るい未来への糧になることを祈っています。
ありがとうございました。最後に吉原さんの夢は?
小学校の先生になることです。
その為に私も前を向いて頑張っています。

<制作スタッフから>

成海カズト(ディレクター)

全体のサウンドプロデュースと、ボーカルディレクションを担当しました。
音楽家としてこのような機会に携わることができたこと、
関わられた全ての方々に心より感謝いたします。

「この曲を届けたい。」と相談を受けてから約1年半の間、何度も打ち合わせを重ねながら、アレンジ、演奏、レコーディング、一つずつ丁寧に仕上げることができました。演奏家、制作者、スタッフ、それぞれの震災に対する思いが音楽を通じ、一つにまとまった、そんな作品になったのではないかと思います。

悲しみや、寂しさ、でもその中に存在する人の本当の力強さ、それが、明日への希望、笑顔に繋がっていくと、そう信じています。

PROFILE

1999年、KenoのVocal、Songwriterとしてユニバーサルミュージックよりデビュー。
アーティスト活動を経て、2002年からは成海カズト名義で音楽活動を開始。
現在はSinger、Songwriter、Producerとして多岐に活躍中。
Kinki Kids、JAEJOONG、超特急、倖田來未など多くのアーティストに楽曲提供を手掛けている。

Carlton Lynn(レコーディング/ミックスエンジニア)

大切な目的のために、素晴らしい才能が集結したこのプロジェクトに参加できてとても幸運でした。オーディオエンジニアとして大きな喜びを感じることができました。この曲が、愛する人を亡くされた方々の心に届き、寄り添うことができますように。

This project brought together an amazingly talented group of people for a great cause and I was fortunate to be a part of it. As the engineer, it was truly a labor of love. I hope this song can bring comfort and healing to those who have experienced loss.

PROFILE

Carlton Lynn(カールトン・リーン)、レコーディング/ミックスエンジニア。
アメリカのアトランタをベースにTLC、アッシャー、クリス・ブラウンなどトップアーティストの作品に参加。2000年にはメインエンジニアの一人としてTLCの作品でグラミー賞を受賞している。
2016年より東京を拠点に活動。
ヒプノシスマイク、ディーンフジオカ、超特急、Red velvet、wacciなど日本の作品にも多数携わっている。

感謝をこめて

今回この制作に賛同してディレクターを担ってくれた成海カズト氏、エンジニアを引き受けてくれたCarlton Lynn氏に感謝致します。コロナ禍で作業がうまく進まずに何度も心が折れそうになった時、二人にはたくさんのアイディアとサポートをもらいました。

この二人が居たからこそ「涙をためてあなたを想う」を皆さまにお届けすることが出来ました。

歌を引き受けてくれた吉原夢さん。あなたに出逢えたことでこの歌に生命が宿りました。大変なことばかりでしたが、精一杯向き合ってくれてありがとう。

途方に暮れている時スタジオを貸して下さった福島県Recording Studio Switchの安部さん、CDジャケットとリリックビデオのアートワークを担当してくれた田中伽奈芽さん、CD、ポスター、チラシ、サイトの制作にご尽力頂いたデザイナーの杉原敦さん、CDを被災地の皆さまの手元に届けて下さった釜石市の菊池のどかさん、他にも携わって頂いた多くの方々に心よりお礼を申し上げます。

そして、この歌を手に取り聴いて下さった皆さま、ありがとうございます。
こうして作られた「涙をためてあなたを想う」が皆さまの心を温めてくれることを願って。